三浦かおりは、埼玉県出身であり、2004 年に京都造形芸術大学情報デザインコースを卒業した。「気配」「余韻」「痕跡」といった 微かな要素を、インスタレーション等で表現する制作活動を行っている。
石川慎平は、東京都出身であり、2014 年に多摩美術大学 大学院彫刻専攻を卒業した。「人は(存在の)気配」だと言い、人が「そこに存在する気配」を、木彫立体で表現している。
少なからぬ観客が、上記のような石川と三浦の作品の共通要素に着目して、この展覧会は主催者により企画・カップリングされた 二人展と思うかもしれないが、実はそういう訳ではなく、第 5 回東京アンデパンダンの人気投票(「入札アンデパンダン」)で、同得票数で2位となった二人による「同率二位展」である。
制作アプローチの共通性が浮き立ってみえるのは偶然である。もっとも、これを「単なる」偶然としてのみ片付けて良いものだろうか。そこには現代社会における必然が含まれてはいないだろうか。
例えば、彼らが、情報氾濫の中で宙吊りとなり無名化していったヒト、モノ、情報などが確かにそこにあった痕跡を、インスタレーションや立体による「場」や「仕組み」の立ち上げの中で、覆い隠したり、ボイド構造を設けたりして表現している点にである。
そこで、第5回東京アンデパンダン展への二人の出品作品をみてみると、三浦かおりの「東京の片隅の届かないつぶやき」は、発せられなかった言葉が人知れず都会の片隅に吹き溜まり蓄積されている様子を詩情豊かに表現したボックスアートだ。それまで作 家がインスタレーションで表現してきた世界を小さいボックスに封じ込めたもので、その身近なサイズと相俟って、見る者の共感を惹き出している。
また、石川慎平の「package」は、形態的・視覚的に人の表情や細部を覆い隠すことで「人体彫刻が観客側に干渉しすぎてこない」 ような佇まいを表現している。観客から見れば、明らかな異形でもあるそれは、作家にとって、「空間を彩る一輪の花のように心地良いもの」なのだという。
「気配」は木の中から立体として削り出されることで、永遠の時間軸に乗り固着するのである。大量消費社会が、さらにIT化されて情報洪水となった、人口 70億人を超える現代にあっては、ヒト、モノ、情報が過剰であり、 次から次へと流れて行かざるを得ない。その中で「本当にそうか「あれはどこへ行ったのか」と疑問に思い「流し/流されたくない」という気持ちが、集団的無意識として共有されているのだとすれば、これらの作品は、あなたにも共感をもたらす筈である。
深瀬鋭一郎(深瀬記念視覚芸術保存基金代表)
石川慎平 SHINPEI ISHIKAWA
1989 東京生まれ
2012 多摩美術大学美術学部 彫刻学科 卒業
2014 多摩美術大学大学院美術研究科 彫刻専攻 修了
活動歴
2010 「DISCOVERY展」グループ展(青華画廊/東京))
2011 「9展」 国立市芸術ホール グループ展(東京)
2012
「I Love The Earth 」グループ展(玉川高島屋/東京)
「第97回二科展」 (国立新美術館/東京)
「2012弘益国際美術祭」 グループ展 (弘益大学/韓国)
2013
「SCULPTOR DRAWINGS 」グループ展(六本木画廊/東京)
「スカルプチャー 」グループ展(多摩美術大学彫刻棟ギャラリー/東京)
「2013三儀国際木彫芸術祭」グループ展(三儀/台湾)
「石川 慎平展」/ 個展(ギャラリイK/東京)
2014 第5回東京アンデパンダン展 (EARTH+GALLERY/東京)
受賞歴
2012 「第97回二科展」 特選
三浦かおり KAORI MIURA
東京生まれ
2005.3 京都造形芸術大学卒業
活動歴
2000.1 「五島プロジェクト」グループ展(アフロシアター/中野)
2001.8 「リ・ブレンド」グループ展 (ギャラリープリンツ/京都 )
2004.3 卒業制作展 コース賞 (D’ s ギャラリー/京都)
2006.1 「10 month」グループ展 (みなとみらいギャラリー/横浜)
2011.8 第2回京都造形芸術大学通信教育課程卒業生・修了生全国公募展 入選 「朱夏の肖像」
(ギャルリ・オーブ/京都)
2011.12 「H 氏への返信」- Art Letter Project 2011 グループ展 (ギャラリー・ルデコ/渋谷)
2012.5-7 レジデンス制作 Artist in studio 2012(BankART Studio NYK/横浜)
2012.7 BankART AIR PROGRAM OPEN STUDIO 2012
2012.8
第3回京都造形芸術大学通信教育課程卒業生・修了生全国公募展 入選「無主の境」(ギャルリ・オーブ/京都)
2012.7〜 新・港区ハンマーヘッドスタジオ「BankART AIR 2012」として入居 (横浜)
2012.9
新・港区ハンマーヘッドスタジオ Open Studio (横浜) 、OPEN YOKOHAMA 50/50 YOKOHAMA Vol.1 (横浜)
2012.9
新・港区ハンマーヘッドスタジオ Open Studio (横浜) 、関内外 OPEN4 50/50 YOKOHAMA Vol.2 (横浜) 2013.1 「1 枚の写真から Vol.1」グループ展 ( 3331 Arts Chiyoda /神田 )
2013.3 「ハギエンナーレ 2013」グループ展 ( HAGISO/ 台東区谷中 )
2013.4〜 新・港区ハンマーヘッドスタジオ Open Studio ( 横浜 ) ※2014.3 まで毎月実施
2013.8
第4回京都造形芸術大学通信教育課程卒業生・修了生全国公募展 優秀賞 「爪あと」(ギャルリ・オーブ/京都)
2013.9 中之条ビエンナーレ 2013 (群馬県中之条町)
2013.11 新・港区ハンマーヘッドスタジオ Open Studio (横浜) 関内外 OPEN5
2013.11 個展「記憶の果て」 (Cafe and Gallery hasu no hana /大田区鵜の木)
2014.3 新・港区ハンマーヘッドスタジオ「撤収!展」(横浜)
2014.4 「戦争って? !」グループ展 (ギャラリー・ルデコ/ 渋谷 )
2014.6 Gallery Camellia 第 1 回公募展「Rainy days and…」来場者投票 1 位 ( 銀座:Gallery Camellia )
2014.8
第5回京都造形芸術大学通信教育課程卒業生・修了生全国公募展 入選 「風の誘い」( 京都:ギャルリ・オーブ)
2014.8 横浜トリエンナーレ「ART BIN」参加 2014.9 ドローイング・コピー展 ( 新宿:つぎのカーブ )
2014.10 第 5 回東京アンデパンダン展 ( 木場:EARTH+GALLERY )
2014.11 シェアスタジオ設立 (世田谷区桜上水 )
■オープニングレセプション:2月7日 (土) 17:00〜
どなた様も無料にてご参加頂けます。お誘い合わせの上、ぜひ来場下さい。
深瀬記念視覚芸術保存基金 代表・深瀬鋭一郎氏の発起により、gallery COEXISTにて開催されていた第1-3回東京アンデパンダン展は、2012年木場にリニューアルオープンしたgalleryCOEXIST-TOKYO/EARTH+GALLERY、1階EARTH+GALLERY( アースプラスギャラリー )にて、第4回東京アンデパンダン展以降、引き続き開催しております。