マンガ / イラスト / 絵画としての脳内世界
石毛春菜 (いしげはるな) は、1983年に千葉県銚子市に生まれ、銚子市立銚子高等学校美術部を経て、日本大学藝術学部美術学科絵画コースに進学した。卒業後もグループ展に参加したり、東京ワンダーウォールに応募したりしていたが、多忙のため最近は作家活動を中断していた。昨年からはイラスト(ないしマンガ)の制作を再開し、第5回東京アンデパンダン展出品が画家としての実質的な活動再開となった。今回の個展はこれらに続く第 2 歩目ということになる。
イラストはデッサン画の様でもあり、油画はイラストの様でもある。これは、作家が生い立ちにおいて重度の漫画好きだったことに起因する。以前は女性漫画家集団「CLAMP」のファンであり、現在は「漫画界のニューウェーブ」と呼ばれる高 野文子作品のファンなのだという。
個展でも展示される、第 5 回東京アンデパンダン展の観覧者による人気投票 1 位となった作品「星一つ」は、石毛自らの「憧れや願いに触れたいという気持ち」を絵画にしたものだという。パネルの上部4分の3は紙を貼りつけて描かれており、下部4分の1には紙は貼られず木性パネルに直描きされている。上半分は紙、下半分は板のちょうど中間に人物の顔が描かれ、その支持体の不連続が人物の外面(上半分)と、心の中(下半分)に隔てて示す様に見える。外面の静謐さに比較して、心は揺れ動き波立っているのだ。
こうした表現の構造が、彼女の独特な線の引き方と相俟ったとき、何とも言えない魅力が現出する。一般的には、輪郭線はひとつの線として境界を画するものだが、「人格を変えるような大きなこともなく、そのまま大人になった」「気の小さい私」(本人談) にとって、脳内に構築された風景を力強い線を引いて表現する自信がない。このため、少しずつ「短い線を描いては不要な部分を消しゴムで消して、消し残った細かい線の集積が総体として稜線を形作っている。それが他者と異なる独特の「線」の成り立ちとなってる。
引き続き EARTH+GALLEREY では、観覧者による人気投票で投票数が同数第 2 位の三浦かおりと、石川慎平の二人展を開催予定である。前回 の第 4 回東京アンデパンダン人気投票トップ 3 から通算すると、廃物再生(第4回 1 位)、焼き物(同 2 位)、折り紙(同 3 位)、イラスト(第5回 1 位)、現代美術インスタレーション(同 2 位)、木彫立体(同 2 位)と続く。様々な表現手段をとる現代美術作家達が、それぞれにどの様な 世界を見せてくれるのか、興味が尽きないところである。
深瀬鋭一郎 ( 深瀬記念視覚芸術保存基金代表 )
どなた様も無料にてご参加頂けます。お誘い合わせの上、ぜひ来場下さい。
深瀬記念視覚芸術保存基金 代表・深瀬鋭一郎氏の発起により、gallery COEXISTにて開催されていた第1-3回東京アンデパンダン展は、2012年木場にリニューアルオープンしたgalleryCOEXIST-TOKYO/EARTH+GALLERY、1階EARTH+GALLERY( アースプラスギャラリー )にて、第4回東京アンデパンダン展以降、引き続き開催しております。