今年で第7回目を迎える東京アンデパンダン展。毎回全国各地からの意欲溢れるアーティストの方々にご応募いただき、小規模ながらもユニークな公募展を継続し開催しております。来場者の人気投票によって決定する上位者は、個展、合同展の権利を獲得するなど、単に作家が展示をするという形式とは異なる、展覧、入札システムを設けているほか、オープニングでの作家による作品説明会など、作家が何を思い制作に取り組んでいるかを知ることができる機会です。是非この機会にご来場、ご高覧下さい。
出展作家
田中七星Nahoshi Tanaka /黒鳥染 Sen Kokucho/堀越吉行 Yoshiyuki Horikoshi/二ノ宮美羽 Miu Ninomiya/佐々木香枝 Kae Sasaki/遠藤加奈 Kana Endo/洲崎永世Nagase Suzaki/河野修二 Shuji Kawano/飴色団栗研究室 Ameirodongurikenkyushitsu/ 石井健 Ken Ishii/Nitosin/ 岩館えり子 Eriko Iwadate/呉逸萱 Goitsuken /MIEZARUTE/ 武重大樹 Daiki Takeshige /小松可奈子 Kanako Komatsu /春田美咲 Misaki Haruta /阿部起任 Kasutaka Abe/ Aimi
二十一世紀初頭のアンデパンダン展のための檄文(第7版)
「アンデパンダン展」(salon des artistes independants)とは、保守的な出展審査でフランスのサロン展から締め出されたジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックらが一八八四年に考案した、出展料さえ支払えば誰でも出展でき、かつ褒賞や出展資格区分で作品や出展者への評価を行わない展覧会の形式である。この展覧会形式は、サロン展に代表される当時の公募展の仕組みに対して憤懣を持つ人々の共感を集め、世界各地で採用された。マルセル・デュシャン(1887-1968年)が「泉」(1917年)を出品したニューヨークのアンデパンダン展はよく知られた例である。
日本では、第2次世界大戦の終結に伴い、日本美術会が「日本アンデパンダン展」として1946年に導入した。「真の表現の自由」を確保し得る展覧会形式として、戦争協力(戦争画等)と引き換えに画材の配給や展覧会への出展が認められていた戦時体制へのアンチテーゼとして、同会の活動方針に係る激しい議論の上に採用された展覧会形式であった。その後、赤瀬川原平の著作に採り上げられた読売アンデパンダン展や、武蔵野アンデパンダン展などの定期開催が始められ、日本においても典型的な展覧会開催方式のひとつとして定着した。
同時に、artistes independants(独立したアーティスト)による実行委員会が展覧会を主催するのではなく、「会」の中に実行委員会が存在してアンデパンダン展を主催するという日本的なあり方は、自分たちが会派ではないことを示す意味から、後の自主企画展が敢えて「アンデパンダン展」という名称を冠しない風潮にも繋がった。「アンデパンダン展」を名に冠する展覧会が再び増加したのは、数十年の年月を経た二十一世紀初頭のことである。会派に属さず活動するアーティストが一般的となった中で、アンデパンダン展の精神が見直され、原点回帰により「アンデパンダン展」という名づけが復活したのである。
近年、アンデパンダン展や震災復興チャリティをはじめ、自主運営スペースやウェブサイト、アーティスト・ギルド、アート塾など様々なアート・イニシアティブが進められてきた背景には、二〇〇八年から九年の世界経済危機や二〇一一年の東日本大震災、原子力発電所事故を受け、これらの現実に照らした「アートの相対化」により社会全体のアートへの関心が相対的に低下し、政府や企業からの支援を受けづらくなったこともあるだろう。また、危機から十分に立ち直らないまま、再び経済の停滞に喘ぐ欧州や新興国の影響もあり、日本国内でもいよいよ楽観を許されない情勢にある。
蓋し、アンデパンダン展は、ニコニコ動画、YOUTUBE、USTREAMなどと同様の「自主投稿」の原理に基づくものである。その精神の根幹をなす「自主独立」は、権力にも商業主義にも妨げられない「真の表現の自由」を確保するための条件であり、未来に開かれた可能性をもたらすものである。モバイル端末とインターネットにより実現したユビキタス(いつでも、どこでも、だれでも)社会、有体物よりも液晶画面の中にリアリティを紡ぎだす現代世界の中でも、アンデパンダン展は、如何様にも展開できよう。今や、アート表現は、政府や企業からの支援がなければ立ちいかないものではない。
斯様な社会状況においては、未来を見据えながら、二十一世紀型のアンデパンダン展を、一段と深化・推進していく意義は高いものと思料し、本年も引き続き全国の同志とともに組織していくものである。
二十一世紀初頭のアンデパンダン展発起人 深瀬鋭一郎
2016年 第7回 東京アンデパンダンは、展覧アンデパンダン(展覧会)/入札アンデパンダン(人気投票+販売)/説明アンデ パンダン(出品作家による作品説明会)/上演アンデパンダン(パフォーマンス上演:出演希望者随時募集<上演無料>)の 4つのアンデパンダンを開催致します。
説明アンデパンダン
11月5日(土)17:00ー
上演アンデパンダン
11月19日(土)18:00ー
「上演アンデパンダン」とは 歴史上有名な「読売アンデパンダン」では、風倉匠が自らを展示物として「事物」という展示を行いました。パフォーマンスの出展です。これは物議をかもしました。果たして、アンデパンダン展において、展示物は絵画や彫刻であるとはいったい誰が決めたのでしょうか。上演は展示ではないのでしょうか。絵画や彫刻の作家だけではなく、パフォーミング・アートのアーティストたちもまた発表の場を求めています。「東京アンデパンダン展」は、こうした上演者に自主参加上演の機会を提供します 。