パフォーマンス性を高め、観客の目の前で、目標 1 分、長くても 3 分以内でたちどころに切り折り紙を制作する。これはウケた。観客から紹介を 受けた「おりがみ会館」(東京都文京区湯島)館長に認められ、ワークショップ講師を務めるようになった。また、居住している江戸川区のイベント で切り折り紙パフォーマンスを披露するようになり、2009 年 3 月から「子ども未来館」(東京都江戸川区篠崎)の講師も務めるようになった。
ある日、ワークショップに参加していた子供が「おじさん、おりがみをきってしまうの?」と問いかけてきた。きれいな紙に鋏を入れることが忍び ないのだという。それが転機となった。以後は、子供でも作り易い「百合の花」の折り方を基本形として、鋏を入れずに、50 通りの折り方に展開して みせた。それが進んで、おりがみを粘土のように折り捏ねて、人物、動物など小立体を制作するようになった。いわば「おりがみオブジェ」の誕生で ある。
いかにも折り紙然とした人物や動物は従来から折られてきていたが、この小立体のような「おりがみオブジェ」は、服部が制作する前には、殆ど 存在していなかっただろう。2013 年の東京アンデパンダン展において、観客人気投票で 3 位に輝いたペガサスをはじめ、考える人、ダビデ、ビーナス の誕生、ニケのビーナス、聖母マリア、ムンクの叫び、西洋の甲冑など、未だ嘗て、折り紙ではあり得なかったモチーフが、服部の手によって次々に おりがみ化されている。
これらの作品を何と呼ぶのかは、作家本人の制作意図次第ということであれば、それらは紛れもなく、現代芸術であり、かつ折り紙なのだ。服部は、 2011 年以降、美濃和紙の里会館の企画展や、銀座の画廊、船堀タワーホールの展示、東京アンデパンダン展などに出展し、作家活動を一段と本格化 させてきている。おりがみにされてしまったペーソスを含むようでもあり、ユーモラスにも、或いは可愛らしくも見える作品たちを、まずは、虚心坦 懐に観賞してみてほしい。
深瀬記念視覚芸術保存基金 代表 深瀬鋭一郎
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