一曲の歌では、伝えきれない。
一編の詩では、言いあらわせない。
一枚の絵では、とても語り尽くせない。
神話はどこに行った?
ある時、こつ然とその姿を消してしまった。
言いたいことがたくさんあるのに。
聞きたいことがたくさんあるのに。
——————ホルモン関根
ホルモン関根は、1980年以来、世界中でパフォーマンスや展覧会を行っている気鋭のアーティスト。「愛と安心」をテーマに、エネルギーに満ちた作品を発表し続けています。ギリシア、そしてイタリアに学んだ経験を持つ彼の作品は、一見すると楽しげで親しみやすいものですが、その背景には、ヨーロッパ近代思想史を探求することで、断片化された思想・哲学の文脈の上に自らの表現を確立していこうとする試みがあります。
誰もが「他者に認められたい」という欲求と劣等感というコンプレックスを抱えて生きています。このメビウスの輪の軌道上にある逡巡を打ち破ったのが芸術との出会いであり、その感動は「ちっちゃな自分の殻を突き破り、むしろ全く違うとてつもなく広大な次元が自分のうちに存在することを教えてくれた」と彼は言います。
「感動とは、自分を自分たらしめる手段であり自分の本当の存在をきづかせるモノだ」という彼の言葉は、SNSの浸透による一方的かつ安易な自己表現が日常となり、本当の意味でのコミュニケーションが希薄になった現代において、重く響いてくるのではないでしょうか。他者によって揺さぶりをかけられることで自己を発見するという「感動を伴ったコミュニケーションを現代美術という言語にのせて表現するホルモン関根からのメッセージを本展で感じていただければ幸いです。
オープニング・イベント
6月2日(土)18:00~
ホルモン関根によるギャラリートーク
「意思の上にも30年/創作の軌跡を語る」
クロージング・パフォーマンス
6月23日(土)18:00~18:30
あおひと君パフォーマンス
三味線:早乙女和完