この度gallery COEXIST-TOKYOでは、映像を中心に制作活動をおこなっているアーティスト、町野三佐紀（まちの・みさき）の個展を開催いたします。

「膜」「表皮」「波」をモチーフに、空間全体を覆うように映像を投影する手法を用いる町野の作品に、鑑賞者は、底知れぬ、淀んだ、暗く重たい茫漠とした存在が界面を乗り越え、呑み込み、引きずり、流れ込み、あるいは流れ出てゆく感覚を体験します。

—私たちの身体は、皮膚よりも外側にも伸びている。
感覚は身体だけにとどまらない。衣服や靴のまたその先、直接身体に触れていない視線の先にまで伸びている。
身体を超えた感覚。その位置と範囲を確かめるように凝視する。
不自然に膨張した領域は、周囲を取り囲み漂っている。
感覚が先へ伸びれば伸びるほど、身体は実体から遠のき、透明なものになっていくのではないだろうか。
(町野三佐紀)

海の近くで生まれ育った町野はイメージの源に海があると言います。
光を反射し、こちらの世界を映す海の水面を見つめるとき、その下にはどこまでも暗く深い無音の世界が広がっていることを想像せずにはいられません。そこへ踏み入れることへの恐怖と、永遠の沈黙の中を漂うことへの想望。静かに刻々とかたちを変えてゆくシーンの重なりに、外界と内界を分けていた表面が揺らぎ、浸食され、一体化することへの衝動を覚えることでしょう。

本展は、映像インスタレーション「さざめき」と新作の写真シリーズ「夜陰」の二部で構成。静かなる衝動に包まれる町野の世界をご紹介します。

町野三佐紀(まちの・みさき)
富山県生まれ

東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業（2002）
東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程（油画）修了(2009)

「さざめき」2012　ビデオインスタレーション　モノクロDVD 7min.(Loop) 「さざめき／夜陰」gallery COEXIST-TOKYO（東京）

「y120001」2012　ラムダプリント　560×457mm