画像:井上実「ベランダの植物」2014 リトグラフ
画家は制作中、絵の前を行き来する。絵のまえに近寄ったかと思うと引いてみたり、彼等はいったい何をしているのだろう。当然のごとく、画家は支持体に近寄っては描き、そして一旦引いて見て、構図をはかってディテール、ニュアンスを詰めてゆく。
素朴に、わたしは絵を描く人に限らず、絵を見る人にも同様の見方、捉え方、そういった視点や観点を動かし意識する、そんな“行ったり来たり”の行程が必要だと思う。
もちろん絵の見方なんて、たくさんあってよい。けれども、いつもと同じ観点、目線で見ても、絵の奥深さや、おもしろさなんてわからないと思う。
観者と絵との関係、あるいはキャンバスに描かれた対象との距離、壁に互い違いに並ぶ絵と絵のあいだから生じる大小やズレ、対象に近づいた時のマチエールとのギャップ、そういった距離間をあえて表面に、それを操作するかのような一点、一点が配列される。
点という対象があって空間性が想起されるように、絵画空間という背景(後景)に観者をフィードバックさせることで、いつもとは異なるスケール感が観者の脳裏に拡がり、空間に奥行きや異和感が感じられる、そんな展示空間を描ければと思う。
山極満博(本展企画者)
トークイベント開催! 2月15日(日)15:00〜
野口玲一氏(三菱一号館美術館 学芸員)をゲストに迎え、参加作家とトークをおこないます。
参加費500円(ワンドリンク付き)
荻野僚介「w364×h257×d20 or w257×h364×d20」2014 アクリル絵具、キャンバス photo : 椎木静寧